迷える仔羊はパンがお好き?
  〜聖☆おにいさん ドリー夢小説

     12



お久し振りでございます。(こそこそ…)
もうすっかりと忘れ去られていてもしょうがない、
一応、このお部屋の本編のはずの“迷える仔羊”シリーズでございます。
色んなことへ萌えたり笑ったりしてしまわれたイエス様が
歓喜のあまり“祝福せよ”と皿から転変させたパンの群れを見て感動し。
一般人に身をやつし、世間から隠遁しておいでの匠だと
力いっぱい思い込んでしまった パン職人見習いのさんから、
どうか弟子にして下さいと見込まれてしまい。
それを強引に振り払えぬまま、
とりあえず、頭が冷えてくれるの待ちで、
自主的に諦めてくれますようにと
まずは“風変わりな師匠”大作戦を敢行してみたれども。
これがなかなか、
いい歳してネトゲにハマっていようと、
雨の中をわざわざ濡れて歩くよな奇行を見せようと、
(いや、そっちは期せずしてという状況だったんですが)
ついて来れちゃう頼もしさを見せるばかりのお嬢さんだったりし。
そんな中で“そうだ、わたしの腕を見ていただこう”と、
パンを焼いてご覧にいれますと張り切ってたさんだったものの。
結構なお手前、もとえ、手際よく仕込みを済ませたその生地を、

 『あ〜〜〜〜〜っ、しまった忘れてたぁっ!』

ご町内じゅうに響き渡るほどの
大きな声を張って思い出すうっかりさんでもあって。
確か1時間おくとか言ってなかったか。
それからガス抜きをして二次発酵させ、
1.5倍まで膨らんだら成型して焼くのだとかで。
もしかせずとも、
こういった“待ち”の段取りを忘れがちなうっかりが、
彼女にはパン作りは向いてないと
周囲が断じてしまう要因なのかも知れないなぁと。
また一つ、ご本人からは聞けなんだものが
彼女の自然な素行の中から
見えて来もした最聖様たちだった、その同じころ。






それはそれは清らかで、心落ち着く静けさに包まれし安寧の地。
清涼にして祝福の暖かさに満ちた陽が燦々と降りそそぎ、
足元には純白のふわふかな雲が延々と続くように敷き詰められ。
他には何もなく見える平らかな空間に、
大きくて厳粛な佇まいの両開きの扉だけがぽつんと置かれてある
……というのが当初の風景だったそうだけれど。
今や隣接する待ち合いロビーがあって、
そこでは登録との照合を待つ、善行なしたる清らかな魂の皆様が
天乃国への入国を待つ間、
神や仏のPVなんぞを観ることも出来るような 今時風に変わりつつあり。
総合受付に当たるカウンターもどき、
扉の番人たる使徒の皆様がついておいでの席には、
今日の当番なのだろう、
顎にたくわえたお髭がお揃いではあるが、
気性や何やは微妙に対照的なご兄弟が
今は応対する来訪者も居ないか、
手持ち無沙汰なご様子で座っておいで。

 「イエス様、ちゃんのこと まだ言い聞かせ切れてないのかな。」
 「押しが弱いにもほどがあるよな。」

昨日試みた“ネトゲ大作戦”に於いて、
ネット上でのお友達ですという格好にて、
ゲーム内のヴァーチャル空間、
ヴィラスーラ平原まで援軍となって駆けつけてくれた、
漁師兄弟こと、ペトロとアンデレのお二人で。
正装にあたろうトーガ姿で、背条もしゃんと着席してこそいるものの。
手が空けばついつい気になるのは、
師であるイエスへ降りかかった微妙な難儀についてだったりし。

 『パンを作ったには違いないんだし…。』

事実を言ったところで信じては貰えまいとの観点から、
買ったのだ貰ったのだと、現物の出自への白こそ何とか切り通せても。
では、どこで入手したパンかの説明が、結局は嘘まみれになろうから。

 「それって、あのお二人には。」
 「ああ。」

そんな罪深きこと、到底貫き通せなかろう方々なのは明白で。
いっそのこと、あの神秘のお力ほとばしる、
神憑りな弁舌で言いくるめてしまわれればいいものを…とも思ったが、

 「教えに関してじゃあないとなぁ。」
 「つか、
  ご本人が舞い上がってしまわれたんじゃあ、機転も利かんて。」

本気か機転か、それとも大ボケか。(おいおい)
そこってそれを応用してもいいのかというような、
微妙な一言を持ち出すことも、たまにある先生たちじゃああるけれど。
相手を心から説くための弁舌もまた、
豊かな導きの御心か、あるいは…必死な集中あっての代物であるらしく。
パンイチのイエス様が天国の門から出て来るのを目撃しちゃった一件の手前、
決して怪しいものではないのですと
自分のあられもない姿を已を得ないそれだと熱弁したのへ、
来合わせた皆さんが敬虔な祈りの姿勢で聞き入っておられたほどだったのも、
正しくそれに当たるのかも知れぬ。
そもそも布教に添うた御力、
ああまで必死にでもならなきゃあ、
筋違いなことへの効果はさすがに出せぬそれなのだろう。

  いやまあ、こちらのお二人はそこまで御存知ないかもですけれど。

 『こうなったらいっそパン職人になってしまうかい?』

松田さんにも、実は手に職を持つタイプの特別職と言ってあるんだ、
いっそのこと商売を始めれば、信用もされようってものだしねと。
苦し紛れの冗談だろうが、ブッダ様が言い出したのへ。
イエス様も何やら思いつかれたか、それは朗らかなお顔になられ、

 『それだと、但し焼くところは見ないで下さいっていう、
  鶴の恩返し風の職人さんになっちゃうね。』

 『そうなるね〜vv』

畳み掛けられたお言いようへ、二人して あはははと沸いてから

 『だから、誰の難儀だと思っているのっ

仏の顔が一気に二つも減ったのを、伝心越しに目撃し、
ああこれが噂のと、
かなりの遠方にいたにもかかわらず、
その威容へ震え上がった彼らでもあって。

 「そういや、雷兄弟からも何も言って来ないけど。」

下界へ降り立っておいでのイエス様を話題にすると
そこはやはり、
愛する先生の近況を知りたい弟子ごころは同じということか。
どうやって聞き付けるものかは謎ながら、
何かあったらいしいなと顔を出すのがお決まりなのだが。
今回の騒動なぞは、まだほんの昨日一昨日のことだというに、
昨日のうちには もう聞き付けていての、
こちらが遅番のシフトで入りかかったのとの入れ替わりざま、
一体どういうことだと咬みつかれたのであり。

 「まあ あいつらは気まぐれだから、
  見に行くと言ってはいたが、その通りにすぐ動くかどうか。」

彼らの異名は、その声の大きさと気性の激しさから、だそうですね。
怒り狂うと手がつけられない人だった誰かさんといい、
そんな人をも魅了し、
師事しますと言わせたイエス様とその教えの素晴らしさは
今更とやこうと言うまでもないことながら。

 『心へ染み入る判りやすい説法と、それから
  あの前向きな人柄とで惹き寄せたんだろうなと
  思えてならずでしたよ。』

とは、いつだったかブッダ様が
やんわりと苦笑しつつではありながらも、
何て幸いなことでしょうねと吐露なさった本音だったとか。
そのブッダ様が やれやれと肩を落とした事態を
そのお仲間たちが引き起こしておいでなのは、
こっちの彼らへも明日には伝わることだとして。(苦笑)

 「お人が良いのがいかんのだよな。」

ダメなものはダメと、
それこそ かつて商人らが勝手に両替やら供え物の店を開いたのを、
厳しく叱り飛ばした勢いを思い出されて、
言い諭せば良いものを…なんて。
ペトロが細くて味のある目に糸を張って力説したものの、

 “いや、あれはイエス様も
  テンパッてたからこそ だったらしいけどな。”

兄よりは冷静で、現状へ飛び込むのを一呼吸遅らせつつ、
その分 状況を見回してからとして来たアンデレとしては。
件の騒動の真相も、彼なりの、だが
結構 正確に
(ぷぷ…)把握しておいでだったりし。
まったくもう、お優しいのもほどほどにしないと、
こういうパネェことさえ起きちまうってもんだなどと。
実は…そんな面もお持ちのイエス様だから放っておけぬとし、
だからこそ深く案じているくせに。
まったくもうなんて言い方になっている不器用な兄なのへこそ、
長い前髪の陰で、絶えない苦笑を何とか表へ出さぬよう、
苦心しているアンデレだったりするのだが。
そんな彼の気も知らず、

 「そうだ。
  いっそのこと、
  全部“ドッキリ”でしたって持ってくってのはどうだろか。」

よほどの名案か、ぱあっと表情輝かせ、
なあなあ聞いてと、すぐお隣りから身を乗り出して来る兄上で。

 「全部?」
 「そう、全部。」

イエス様がパン職人なんてのは 実はうそ…じゃなくて仕込みで、
他の人へのドッキリ、戸棚の中はパンだらけってのを仕掛けてたとこへ
あんたが間が悪くも来ちゃったんだってことで。

 「その言い訳で、
  あの彼女さんを説得しようってことでしょうか。」

 「そうっ。良い思いつきだろ…って、どわあぁっっ!」

てっきりアンデレが応じたかと思いきや、
いつの間にかカウンターデスクの前に立っていた、小柄な人影からの声であり。
夜陰を思わせる漆黒の髪で、そのお顔を隠し気味にしておいでの青年で。
やや卑屈そうにおどおどとした物腰がいつまでも直らぬのを、
イエス様からも案じられている、
彼の愛すべき使徒の一人、

 「驚かすんじゃねぇよ、ユダっち。」
 「これは失礼しました。」

すいませんね、存在感が薄いものですから。先程から声を掛けてはおりましたが、ええ、この回覧板を回すために。はい、お話も聞いておりましたが、他言は無用というのでしたら黙っております、いくら裏切り者の私でも、そこは心得ておりますとも。ですが、イエス様の遭われた難儀も大変なものですよね。あのような尊いお方が、どうしてこうも苦難にばかり見舞われるものか。せっかくのバカンス中だというのに、これでは気も休まりますまいというもので…

 「で?」
 「はい?」

放って置いたらどこまでも滔々と回りくどいお説が続く彼なので、
短い一言、いやさ一音で そこをはしょって差し上げるペトロであり。
さすがにそれでは話が続かんと、そこを補ったのがアンデレで。

 「お前まで知ってるとは、
  さすがイエスさまの動向だからだろうけど。
  それを“ドッキリ大作戦”では誤魔化せねえって、
  お前、言いたそうだなってことだぜ。」

話が進まないのでとの助け舟へ、
その要因の堂々と一端であるずぼらな兄が
もっともらしく“うんうん”と頷いたのも たいがいだが、(笑)

 「ああ、だって。」

日頃は滅多に見られない、
それは判りやすい笑顔を披露したユダが、ペロッと告げたのが、

 「もう遅いってことですよ。
  問題のお嬢さん、イエス様に見せるためにって、
  今日はパンを焼いてらしたそうですから。
  ああ、これってヤコブさんから訊いた話ですけれどもね。」

 「〜〜〜〜〜っ☆」
 「あんの野郎、
  そういう大事な話くらいちゃんと事後報告しろってんだっ

平和なんだか、大変なんだか。
天国の門の前でも
結構なにぎやかさで取り沙汰されてる イエス様たちなようでありましたvv








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 *六月かぁ。(笑)
  四カ月かかってますが、まだ3日しか経ってません、こちら。
  もう一方のお話たちの方が楽しくてしょうがなく、
  ついつい手をつけられないままになってて申し訳ありません。
  そろそろ、大きな動きを持ち込まないと、ですよね。

  う〜〜〜〜ん。

  いっそのこと、
  彼らの日常というテーマの
  シリーズにしちゃってもいいかもだなぁ。(こらこら)


ご感想はこちらへvv めーるふぉーむvv



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